エンジニアや工学系の学生はご自身の専門分野あるいは新しい分野の勉強のため、技術書を読む機会があると思います。
今回、『技術書』の読み方に関する読書術本『「技術書」の読書術 達人が教える選び方・読み方・情報発信&共有のコツとテクニック』を読みましたので、書評を書きたいと思います。少しでもお役に立てれば幸いです。
本書を選んだ理由
プログラミングやAIなどを技術書によって勉強したいことは多くあると思います。
勉強するために買った技術書をいざ読み込んでみると
「専門用語が多すぎて読むのに時間がかかる」
「時間をかけて読んだけど、結局よくわからなかった」
という経験はありませんか???
私も技術書を読みますが、読む時間はかかるし、難しくて挫折しそうになるし、自分の力になっているかわからないことが多かったです。
私の経験~ディープラーニング勉強~
私は以前、ディープラーニングについて興味を持ち、勉強をしようと思いました。
勉強しようと思った当時はブレークスルーでディープラーニングが盛り上がっていた時期ということもあり、多数のディープラーニングに関する本が出版されていました。
勉強する本を選ぶにも選択肢が多く、その中から選ぶのに結構時間がかかりました。
ブログやAmazonレビューなどで、Python初心者でも実装まで行けると評価されているオライリーの『ゼロから作るDeep Learning Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装』を購入しました。
確かにPythonの導入から解説があり、Pythonの勉強とディープラーニングの勉強を網羅的にでき、大変役立ちました。
一方で、肝心のディープラーニングの原理的な解説については私には難しく、何度も読み返し時間をかけて読み込みました。
振り返ると、この本を読む前に図解されているもっと初心者向けの本を読むワンクッションが必要だったと思います。
目的
私は最近、良い読書の方法を調べるために読書術本を探し、読んでおります。
読書術本のノウハウは、ビジネス書を筆頭に一般の自己啓発本を読む上で大変役に立つと実感しております。
一方で、コーディングのノウハウを含め工学系の技術書を読むには、そのまま適用できません。
私の経験からもっと自分に合った技術書の選び方があるのではと思い、技術書の読書術本を探しました。
技術書に特化した内容になっている本書を読み、自分に合った技術書の選び方と効率よく読み進める方法のノウハウ習得を目的に本書を選びました。
本書を読んで学んだこと
この本を読んで以下のことを学びました。
- 自分のレベルに合った技術書の選び方
- 同じテーマの本を複数読むことの大切さ
- 技術書を使った新しいプログラミング言語の習得方法
- 高効率の読書インプット法
- 技術書を読んだ後のアウトプット方法
内容に入る前に、本書では技術書の読み方を解説していますが、「ITエンジニア」を想定した記載が多いです。
そのため注意としてプログラミングを本業としないハードウェアエンジニアには一部内容がピッタリではない部分がありました。
一方で、大部分は読書術に関する内容ですので、役に立つノウハウはあると思いますので安心してください。
「技術書」の読書術 ~自分のレベルにあった技術書の選び方~
実のある読書をするために重要な選書方法!
本書では2人の著者のそれぞれの選書方法を91ページにわたり解説しています。
本書の提案する選書方法の中で、私が重要かつ実践が簡単だと思った手法を3点挙げます。
- 自分のスキルに合った本を見極める
- 本の種類別に考える選び方~技術書の種類を知る~
- マッチ度の見極めは大切だが、柔軟にとらえよう
自分のスキルに合った本を見極める
著者は簡単に本の難易度や内容を把握する方法として以下のような手法を提案しています。
書店の平積み・面陳の本をチェック
まずは書店で平積み・面陳列されている売れ筋の本を手に取ります。
平積みされている本は同じ本が何冊も積み重なっているため、それだけ本が売れていることがわかります。
一方、面陳は表紙が良く見えるため、注目を集めたい、売り出したい本が陳列されています。
新刊もそのように陳列されますが、本の最後のページの刷数を確認して長く読まれているベストセラーを探します。
「はじめに」や「まえがき」をチェック
本を手に取ったら、まずは冒頭にある「はじめに」や「まえがき」をチェックします。
この項目には著者が「どんな人に読んでほしいか」、「読んだ後、読者にどうなっていて欲しいのか」と想いが込められています。
ここを読めば、自分が著者の想定するターゲットなのか判断することができます。
「目次」をチェック
続いて「目次」をチェックします。
自分の目的に合った内容が記載されているか、章、節、項のタイトルを確認して把握します。
目次を読んで内容のイメージができなければ、少し難易度が高いかもしれない。
一方で、目次を読んで知っている内容のページが多ければ、優しすぎる本だと判断できます。
以上の項目を書店で確認すれば、短時間に簡易的に自分の理解度に合った本なのかが判断できるとのこと。
本を手に取った時に簡単に実践できる内容なので本書の役に立ったポイントの一つです!
本の種類別に考える選び方~技術書の種類を知る~
本を選ぶ際に、技術書の種類があることをあらかじめ頭に入れておくと、その本のターゲットがどこなのかわかりやすくなります。
本書では以下の技術書の種類があることを解説しています。
- 概要を紹介する本
- 理論や手順を解説する本
- 図解が中心の本
- 読み物としての本
仕事としてがっつり勉強する必要がある人にとって、理論や手順を解説する本が有用です。
一方で、技術者と一緒に仕事を進めるうえで前提知識を身につけておきたいビジネスマンやプロジェクトマネージャーには、概要を紹介する本や図解が中心の本が有用になります。
このように手に取った本の種類が何なのか把握しておくと、より自分の目的に合った本が選べるといえるでしょう。
マッチ度の見極めは大切だが、柔軟にとらえよう
自分に合う本を吟味するあまり、選書に多くの時間をかけていては本末転倒です。
本書では「読書を始めることが重要。選書については良書を選び続けることは難しいので柔軟に対応することが大切」と解説しています。
とにかく読むことが大切だから慎重になりすぎるなという教えは単純明快ですね!
今は難しくても同じテーマの他の本を読んだ後に読めば難易度は下がることもありますよね!
「技術書」の読書術 ~同じテーマの本を複数読むことの大切さ~
本書では「1つのテーマで3冊は読む」ことのメリットを説明しています。
例として、入門書、専門書、逆引き書(応用の事例が先にあって、それを実現する方法が載っている本)を読むことを進めています。
入門書で技術の基礎を学び、専門書で使えるレベルで専門的な技術を理解し、逆引き書でどんな事例で使えるのかを学ぶ。
この一連の流れで、実務に使えるレベルでインプットできると解説しています。
また、「入門書を3冊読んでみることもよい」と提案されています。
1つの本にしか載っていないことは豆知識に近く、すべての本に載っていることはとても重要と理解できるためです。
この考え方は『東大読書』、『読んだら忘れない読書術』にもありました。
すなわち、同じテーマの本を複数読むことはとても重要ということですね!
「技術書」の読書術 ~技術書を使ったプログラミング言語の勉強方法~
本書における他の読書術本との一番の差分が『技術書を使ったプログラミング言語の習得方法』について解説されている点です!
プログラミングを学ぶゴールを意識する
本書では、プログラミング言語の習得する上で肝に銘じておかなければならないことは
『プログラミングは目的ではなく手段』
であることと説明してます。
プログラミング言語習得のためにつまらない基礎のコードを作って挫折する必要はなく、「世の中にないものを作る必要があるからプログラミング言語を学ぶ」というスタンスで「最終的に自分が作りたいもの」を意識して技術書を読むことが肝心と主張しています。
複数のプログラミング言語を比べながら読む
似たプログラミング言語(Ruby⇒Python⇒Java⇒C#など)を複数同時に読み進め、同じ処理を実現するのに、各言語でどのように違いがあるのか意識して勉強することが理解度を高めるコツとのこと。
同じ結果が得られるプログラムを複数実装することでさらに理解が深まるとも。
あまり考えたことのなかった方法でした!
読書もそうですが、似たようなものを平行して勉強することはインプットを高める上で重要ってことですね!
「技術書」の読書術 ~高効率の読書のインプット法~
2人の著者(増井氏、IPUSIRON氏)による読書法の解説で、いろんな手法が紹介されています。
その中でも大切だと思った部分は以下です。
- サンクコストの考え方を取り入れる(増井氏)
- 1冊90分で読む時間制限読書法(IPUSIRON氏)
サンクコストの考え方を取り入れる(増井氏)
当初の目的に合わない部分は時間をかけない
少し読んで「違うな~」と思ったら流し読みしてしまう。
これがサンクコストの考え方です。
読書はよく自己投資と言われますが、文字通り書籍代を投資して自己啓発します。
加えて、本を読んでいる時間もコストが発生しています。
なぜなら、その時間に働くことで収入を得られたりなど、メリットがあったかもしれないからです。
すなわち、
- 自分の読みたい内容ではないとわかったら読むのをやめる(あるいは流し読み)
- その本を読む当初の目的を達成したら読むのをやめる(あるいは流し読み)
上記の2点を実践することで、目的の技術・ノウハウを短時間で習得できるため、費用対効果が高くなるというわけです!
1冊90分で読む時間制限読書法(IPUSIRON氏)
時間制限読書法とは、定めた時間内に1冊を読了するという目標を掲げて読書をすることです。
「技術書」の読書術 達人が教える選び方・読み方・情報発信&共有のコツとテクニック
1冊90分。。。
かなり短いですね。
著者が解説するメリットについてみていきます。
メリット
- 集中できる(人は時間制限があったほうが必死にやる)
- パーキンソンの法則を活用(人は制限時間をすべて使ってしまう)
- 悪書のリスク軽減(目的に合わなかった本を読んでも損失が少なく済む)
- 速読の訓練になる(読書のスピードがだんだん速くなる)
メリットはわかっても本当に実現可能なのか気になりました!
この方法を実現するための考え方もまとめられています。
特に重要な考えをピックアップすると以下の2つかなと思います。
時間制限読書法を実践する上で重要な考え方
- 20対80の法則(大事な部分は全体の2割に書かれているため、全部を読む必要はない)
- わかりやすい本から始め、たくさん読む(前提知識が増えるほど本を速く読める。)
思い切って読み飛ばすところがポイントとわかりましたが、前述の本の種類により使い分けが必要かと思いました!
概要を学ぶ本であれば適用できると思いますが、理論・手順を学ぶ本では途中で話についていけなくなるかもしれません。
本書では、時間制限読書法の実践方法も解説されています。
その方法は簡単で「時間を区切ってタイムリミットには読むのをやめる」です。
集中力を高めるためのシンプルな手法で良い方法ですね。
また、どうしても時間内で読み終わるようになれない場合は「flier」などの要約サイトを利用してもよいと述べられています。
『「技術書」の読書術』を読んで
この本の感想としては「とにかく多くの読書術が載っている」でした。
2人の著者によるそれぞれが良いと考える読書法が載っているので、
「読書術は自分に合った方法を探さなければならない」
と実感しました。
上記からわかるように、1つの本ですが、「この読書術が良い」と1つにまとまっているわけではなく、「こんな方法があるよ」というアイデアを色々与えてくれる本になっています。
特に「本を裁断して小分けに綴じて持ち運ぶ」方法にはびっくりしました(笑)
今まで考えもしなかったです。
まとめるとこの本に関して感じたことは以下の通りです。
- プログラミング言語の習得方法まで踏み込んで、プログラム本の活用方法が解説されている本はあまりないため、目的が合う方は読む価値あり。
- 技術書を読むときは、他の本よりも難易度に気を付けて読むことが大事ということがよくわかった。
- 「読む本を選ぶ」、「多読する」、「同じテーマの本を複数読む」、「読書記録などのアウトプットが重要」等、他の読書術本でも述べられているような大事な要素は盛り込まれているため、この本だけでも効率的な読書を学べる。
- 他の読書術本の方が体系的にまとまっているため、1冊目は他の本を読んだ方がすっきり入ってきそう。
エンジニアにフォーカスした内容も多いですが、大事なところは抑えている本だと思います。
目的に合う方はぜひ読んでみてください。
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