なかなか上がらない収入、同期の転職話など聞くと、自分のスキルやキャリアについて不安になりますよね。
転職について、今まであまり考えてこなかったのですが、選択肢として持っておく必要があると感じ、『このまま今の会社にいていいのかと一度でも思ったら読む 転職の思考法』(北野唯我著ダイアモンド社) を読みました!(以降、転職の思考法)
転職を考える主人公「青野」視点のストーリー形式になっており、大変読みやすい内容になっておりました。(ゆめをかなえるゾウみたいな感じです)
特に、自分の強みと会社の強みが一致しているか?という視点はなかったため、勉強になりました。
特に学びになった点は以下の通りです。
- 転職に必要なのは、どんな会社を選ぶかの判断基準「思考法」を身につける必要がある
- 自分の価値の確認、市場移り替わり、転職先の選び方にはステップがある
- ある程度やりたいことは必ず見つかる
『転職の思考法』とは
「転職の思考法」とは、人材系メディアに参画、ビジネス誌でコラム執筆を行われている、「職業人生設計」の専門家として知られている北野唯我氏の著書です。
著者の「すべての人が『いつでも転職できる状態』をつくりたい」という思いで執筆されているとのことでした。
本書は主人公「青野」の行動を追う物語形式で、最後まで読むと転職する上で持っておくべき考え方がわかるようになっていました。
本書は、以下の全4章構成になっております。
- 第1章: 仕事の「寿命」が尽きる前に、伸びる市場に身を晒せ
(「一生食える」を確保する4つのステップ) - 第2章: 「転職は悪」は、努力を放棄した者の言い訳に過ぎない
(「組織の論理」が人の心を殺すとき) - 第3章: あなたがいなくなっても、確実に会社は回る
(残される社員、パートナーとどう向き合うか) - 第4章: 仕事はいつから「楽しくないもの」になっただろうか?
(心から納得のいく仕事を見つけるために必要なこと)
第1章には、転職をしていくために必要な考え方の整理の流れが体系的にまとめられています。
「マーケットバリューとは?」、「仕事がなくなるサイクルとは?」、「伸びるマーケットとは?」等、転職について全く無知でもわかるように解説されているので、まずこの本から入るのでも問題ないと思いました。
この章だけでも大枠が理解できるので、まずはここだけでも読んでみると役立つはずです。
第2章~第3章は、転職に付随するよくある不安に対する考えの持ち方について解説され、第4章では、楽しめる仕事の見つけ方について述べられています。
以降、この本の特徴だと思った点について説明していきます。
『「一生食える」を確保する4つのステップ』がわかる
本書では、転職をするにあたり、取り組むべき作業を4ステップで体系化しています。
自分のマーケットバリューを測る
マーケットバリュー(ビジネスマンとしての自分の価値)は以下で決まります。
技術資産 × 人的資産 × 業界の生産性
技術資産:職種に関連するスキル(営業、マーケティング、会計、プログラミングなど)
人的資産:人脈。
業界の生産性:その業界の人間が一人当たりどれほどの価値を生み出しているか。影響が最も大きい。
エンジニアにとっては、技術資産、業界の生産性の影響が大きく、プロフェッショナル型キャリアと本書では呼ばれています。
ポイントは、マーケットバリューを構成する3要素についてそれぞれ鍛えるべき年代があるということ。
特に20代では後々貴重な経験を回してもらえるように専門性を磨くことは他者と差がつきやすいポイントかなと感じました。
また、最後の「業界の生産性」はその業界において、「従業員一人当たりどれほどの価値を生み出しているか」という観点になります。
マーケットバリュー≒給与額なので、一人当たりの稼ぐ額が高いほど報酬も上がるということですね。
同じ能力を持った人間でも、利益率の高いコンサル業界にいたほうが給与が何倍も違うように、業界の生産性はマーケットバリューに最も影響を与える要素とのことです。
今の仕事の寿命を知る
本書によれば、『すべての仕事は「仕事のライフサイクル」に沿って生まれ消える』とのこと。
伸びている業界(②スター)、あるいはこれから伸びる業界(①ニッチ)にいるだけで価値が高い。
伸びている業界に身を置くことが大事だと述べられていました。
それは追随する企業が、立ち上げた経験(貴重な経験)を持つ人を欲しがるから。
伸びている業界の見極め方についても簡単に解説があり、競合もまとめて伸びていればマーケットが拡大、逆に競合も業績ダウンしていればマーケットは縮小していっているという判断基準とのこと。
現在でいうと、ChatGPTのような生成AIはここ数年で①ニッチから②スターに遷移し、この間に①の開発経験を持つ人はマーケットバリューがかなり高くなるということと理解しました。
伸びている業界での経験は、どれも貴重な経験になりやすいってことですね。
仕事のライフサイクルについては、以下の記事参照。
強みが死ぬ前に伸びる市場にピボットする
前述の通り、伸びている業界に移ることが大事ということがわかりました。
伸びる市場の判断基準としては以下が挙げられています。
〇:いずれ大企業の競合となるようなベンチャー企業が多い市場
×:10年前と同じサービスを提供している市場
ソリューション(製品・サービス)をみて、多くの企業が立ち上げているようなものなのか、10年前から代わり映えしないものを提供しているのか判断するということですね。
伸びる市場の中からベストな会社を見極める
本書で述べられているポイントは以下のようになっておりました。
- マーケットバリュー
- 働きやすさ
- 活躍の可能性
上の2つは外れないですが、最後の「活躍の可能性」は人によっては判断基準に入っていない人もいるのではないでしょうか。
転職の目的としては「マーケットバリューを高める」ことが目的のため、いかに自分が成長できる選択肢を選ぶかが大事になります。
成長は自分の行動でつかむもの。すなわち、転職先が活躍でき、貴重な経験を得られる環境でないといけません。
以上の観点から抑えておくポイントとして以下が挙げられております。
- 中途が活躍するカルチャーがあるか
- 自分の職種が会社の強みと一致しているか
自分の技術資産を、会社の事業の第一線で発揮するためには上記の条件が必要と分かりました、
特に、本書で「確かに!」と思ったのが「自分の職種が会社の強みと一致しているか」でした。
私が勤めている会社はメカが主流で、第一線の技術者はメカのメンバーが多いため、活躍の場が他の電気やソフトよりも多いと感じていました。
まさにこういうことがあったので、忘れてはならない判断基準と痛感しました。
『転職の捉え方』がわかる
いざ転職活動をしていても、「自分の選択は正しいんだろうか?」、「今の会社から自分がいなくなったら大丈夫かな」、「転職するにしても他にやりたいことが見つからない」など不安は尽きないと思います。
こうした不安を感じた時の対処方法も本書で言及されている部分がございました。
「転職」という選択肢を持つ
主人公・青野は転職コンサル・黒岩に転職の思考法を伝授してもらう過程で、読者に刺さるような言及を多くします。
消去法で会社に残っている人間に、いい仕事ができない。
このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法 黒岩のセリフ
ただ、『辞められない』という思い込みの檻の中に閉じ込められたら、どんな人間も必ず自分んに小さな嘘をつくことになる
このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法 黒岩のセリフ
グサッとくる人も多いのではないでしょうか?
勤める会社での理不尽も、「転職」という選択肢を持たなかっただけで、おかしいと思っているのに受け入れてしまう。
自分が伸び伸び働くためにも、選択肢として「転職」を持つことが精神面で大事。
このままでいいのかと不安な気持ちを持ち続けるくらいなら、いつでも転職できる準備をしておいて、消去法ではなく、「自ら選んでこの道を歩んでいる」と自信を持ちたいですね。
転職後期に迷うが生じたら目的に立ち返る
いざ転職活動が進んでくると、ふと「本当にこの選択肢が正しいのか」と不安になると思います。
そういう時は当初の目的「マーケットバリューを高められるのか」を考えればよいと述べられてます。
また、転職後の収入が下がってしまうと余計不安になりますよね。
この不安についても「転職後の年収が下がっても最終的に高くなる方を選ぶべき」と断言しています。
理由は「マーケットバリューと年収は長期的に必ず一致する。」からとこれも断言しています。
転職する上で過度に不安を感じず、挑戦してみることがマーケットバリューを高めるコツだと思いました!
マーケットバリューと年収は長期的に必ず一致する。
ある程度やりたい仕事は必ず見つかる
「転職したいが、転職後何をしたいかわからない」
この不安にも転職コンサル・黒岩は解消するための思考法を主人公・青野に伝授しています。
まず、仕事を楽しむためには以下の2点が必要な要素と述べられています。
- マーケットバリューがある程度ある仕事
- 求められるパフォーマンスとマーケットバリューが釣り合っていること
ここも自分が活躍できる環境かどうかが大事なのかなと思いました。
自分の力が発揮できる+自分が成長できると仕事って楽しくなっていきますよね。
また、やりたい仕事に関して、2通りの人間がいて、to do 型(何をするかを大事にする)とbeing型(どんな状態でありたいか)があるとのこと。
そして、99%の人間がbeing型の人間だといいます。
ここについて深堀されていて、being型の人間が仕事を楽しむために必要な条件が説明されています。
being型の人間が仕事を楽しむために必要な二つの条件
このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法
- マーケットバリューが高められること
- その上で、仕事でつく小さな嘘を最小化すること。自分を好きになれなければ、いくらマーケットバリューが高まり、自分が強くなっても、その「ゲーム」を楽しむことはできない。
転職の失敗
転職活動中は「自分の選択は正しいのか?」と不安になることがあります。この本では、「転職」という選択肢を持つことが精神的に重要だと述べています。
最後に正解にたどり着けば過程も失敗とは捉えられない。
だからこそ、失敗する条件は「覚悟を決めるときに覚悟を決めきれないこと」だといいます。
転職失敗の唯一条件は「覚悟を決めるときに覚悟を決めきれないこと」
まとめ
本書では、転職に対する心構えや具体的なステップを学ぶことができました。転職コンサル・黒岩の名言語録で、マーカー引いた部分どれも大事な考え方だと思えるいい内容でした。
特に印象に残った点は以下の通りです。
エンジニアにとって技術資産(専門性、経験)はイメージしやすい
エンジニアにとっての専門性は設計ノウハウだったり、技術的知識が該当し、イメージしやすいなと思いました。
一方で、院卒も多いエンジニア界隈で確実な専門性の確保は20代ではなかなか難しいなとも思いました。
どちらかというとエンジニアも一つの専門性で仕事はできないので、20代から30代にかけて、専門性×経験の蓄積をいろんな技術でパラレルに行っていく方がイメージに近いと思いました!
自分の職種と会社の強みが一致しているかどうかの観点は合点がいく
前述の通り、その会社はどの分野のエンジニアがメインストリームなのか把握しておくことが大事だと思いました。
これは面接のときに聞いてみたりしないとわかりづらいですが、自分の活躍の場に関わる大事な要素だと思うので、押さえておきたいと思いました。
マーケットバリューと給与は長期的に必ず一致する
正しい選択をするために勇気をくれる言葉だと思いました。
つまり、分析をしっかりした上で、自分のマーケットバリューを高めることに集中していれば報酬もついてくる。
余計な心配をせずに集中することが成果を出すために役立つなと思いました。
being型人間の好きなことの見つけ方
人によって負担に感じる仕事は違い、他の人が負担に感じるようなことを苦もなくできれば、それだけでレア度は高まる。(好きなことに近いと捉えればいい)
つまり、マーケットバリューを高められるということなので、こうした観点での自己分析は大事だと認識しました。
「苦しかったときの話をしようか」(森岡毅著)の好き=自分の強みという考えも使えます。
「苦しかったときの話をしようか」の自己分析を実践した記事も書いています。
いかがだったでしょうか?
同じように不安を抱えている方にとって、本書は参考になる内容が盛りだくさんです。ぜひ一度読んでみることをお勧めします。
それでは。
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